古くから日本の生活に根差し、春の訪れを告げる野草としても親しまれている「よもぎ」。草餅やお灸、入浴剤など、その用途は多岐にわたりますが、近年では手軽に楽しめる健康茶としても人気を集めています。食物繊維やクロロフィル、ビタミン、ミネラルを豊富に含むとされ、デトックス効果や体を温める効果などが期待されるよもぎ茶ですが、一方で「よもぎ茶は肝臓に悪い」という気になる噂を耳にすることもあります。
この記事では、多くの方に愛飲されているよもぎ茶について、「よもぎ茶肝臓に悪いなぜ」という疑問の真相に迫ります。
よもぎ茶とは?その魅力と一般的な効果・効能
まず、よもぎ茶の基本的な情報と、一般的に期待されている効果について見ていきましょう。
よもぎ(蓬)はキク科ヨモギ属の多年草で、日本全国の道端や野原に自生しています。強い生命力を持ち、特有の爽やかな香りも特徴です。よもぎ茶は、このよもぎの葉を乾燥させたり焙煎したりしてお茶として飲用するものです。
主な含有成分と期待される効果:
- クロロフィル(葉緑素): 「緑の血液」とも呼ばれ、体内の不要な物質を排出し、浄化する働きが期待されます。抗酸化作用も注目されています。
- 食物繊維: 腸内環境を整え、便通を促す効果が期待できます。
- ビタミン類: ビタミンA(β-カロテンとして)、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンKなどを含み、皮膚や粘膜の健康維持、抗酸化作用などをサポートします。
- ミネラル類: カリウム、カルシウム、鉄分などが含まれており、体の調子を整えるのに役立ちます。
- シネオール: よもぎ特有の香り成分で、リラックス効果や利尿作用、血行促進作用などが期待されています。
- タンニン: ポリフェノールの一種で、抗酸化作用があります。
これらの成分から、よもぎ茶には以下のような効果が一般的に期待されています。
- 体を温める(冷え性改善)
- デトックス効果、老廃物の排出促進
- 整腸作用、便秘改善
- リラックス効果
- 貧血予防
- 美肌効果
- 生活習慣病の予防(抗酸化作用による)
ノンカフェインであるため、就寝前や妊娠中・授乳中の方(ただし後述の注意点あり)でも比較的安心して飲めるお茶として人気があります。
「よもぎ茶は肝臓に悪い」と言われる主な理由と真相
では、本題である「よもぎ茶肝臓に悪いなぜ」という疑問について、考えられる主な理由とそれぞれの真相、注意点を掘り下げていきましょう。
1. 含有成分「ツヨン(Thujone)」の影響の可能性
よもぎ(学名:Artemisia princeps など)が属するヨモギ属(Artemisia)の植物の中には、「ツヨン(Thujone)」という成分を含むものがあります。ツヨンは、大量に摂取すると神経毒性や肝毒性を示す可能性が指摘されている成分です。特に、ニガヨモギ(学名:Artemisia absinthium)はツヨンを多く含むことで知られ、かつてアブサンというリキュールの原料として使用されていましたが、その健康被害から使用が規制された歴史があります。
真相と注意点: 日本の一般的なよもぎ茶に使用される「ヨモギ(カズザキヨモギ、学名:Artemisia princeps)」や「オオヨモギ(エゾヨモギ、学名:Artemisia montana)」に含まれるツヨンの量は、ニガヨモギと比較してごく微量であるか、ほとんど含まれていないとされています。そのため、通常の飲用量であれば、これらの日本産よもぎ茶に含まれるツヨンが原因で肝臓に悪影響を及ぼす可能性は低いと考えられます。
しかし、海外産の「Mugwort tea」として販売されている製品の中には、異なる種類のヨモギ属植物(例えばArtemisia vulgarisなど)が使用されている場合があり、これらにはツヨンが比較的多く含まれる可能性があります。**「よもぎ茶肝臓に悪いなぜ」**という懸念を避けるためには、製品の原料となるよもぎの種類や産地を確認することが一つのポイントとなります。
2. ピロリジジンアルカロイド(PAs)の混入リスク
ピロリジジンアルカロイド(PAs)は、一部の植物に含まれる天然の毒素で、長期間または大量に摂取すると肝障害(特に肝静脈閉塞症など)を引き起こすことが知られています。PAsを含む植物が、よもぎを収穫する際に誤って混入したり、加工段階で適切に除去されなかったりする可能性がゼロではありません。
真相と注意点: よもぎ自体がPAsを主要な毒性成分として含有するという報告は一般的ではありません。しかし、PAsを含む可能性のある他のキク科植物(例:フキタンポポ、キオン属など)が自生環境でよもぎと近接して生育している場合、収穫時に誤って混入するリスクは考えられます。 信頼できるメーカーの製品は、原料の選別や品質管理を徹底しているため、このようなリスクは低減されています。**「よもぎ茶肝臓に悪いなぜ」**という不安を解消するためには、信頼のおける生産者や販売者から購入することが重要です。
3. 過剰摂取による肝臓への負担
どんなに体に良いとされる食品や飲料でも、過剰に摂取すれば内臓に負担をかける可能性があります。よもぎ茶も例外ではなく、毎日大量に飲み続けることは、肝臓での成分の代謝・分解プロセスに負荷をかけることになりかねません。
真相と注意点: 特に肝機能が既に低下している方や、何らかの肝疾患を抱えている方がよもぎ茶を大量に摂取した場合、肝臓への負担が増大する可能性があります。健康な方であっても、常識的な範囲を超える量を長期間飲み続けるのは避けるべきです。**「よもぎ茶肝臓に悪いなぜ」**という疑問は、摂取量との関連も考慮する必要があります。
4. 農薬や化学物質の残留
よもぎは道端や野原に自生しているため、個人で採取する場合、その土地が農薬で汚染されていないか、排気ガスなどの影響を受けていないかを確認することは困難です。市販のよもぎ茶であっても、栽培・加工過程で農薬が使用されている場合、残留農薬が肝臓に影響を与える可能性も否定できません。
真相と注意点: 安全性を重視するならば、無農薬・有機栽培のよもぎを使用した製品や、残留農薬検査をクリアしている製品を選ぶのが賢明です。個人で採取する場合は、汚染の心配がない安全な場所で、よく見知ったよもぎだけを採取するようにしましょう。
5. アレルギー反応や体質による影響
よもぎはキク科の植物です。キク科植物にアレルギーを持つ人がよもぎ茶を飲むと、アレルギー反応(皮膚のかゆみ、発疹、消化器症状など)が起こることがあります。重篤な場合はアナフィラキシーショックを引き起こす可能性も稀にあります。アレルギー反応が肝臓に直接的なダメージを与えるわけではありませんが、体全体への負担となり得ます。
真相と注意点: キク科アレルギー(ブタクサ、マリーゴールド、カモミールなどにも反応する方)のある方は、よもぎ茶の飲用を避けるか、事前に医師に相談してください。初めて飲む場合は少量から試し、体調に変化がないか注意深く観察しましょう。
よもぎ茶を安全に楽しむための注意点まとめ
「よもぎ茶肝臓に悪いなぜ」という疑問を踏まえ、安全によもぎ茶を楽しむためのポイントを以下にまとめます。
- 適量を守る: 1日に何杯も大量に飲むのではなく、一般的なお茶として常識的な範囲(例:1日1~3杯程度)に留めましょう。
- 信頼できる製品を選ぶ: 原料のよもぎの種類(日本産よもぎか)、産地、無農薬・有機栽培であるか、残留農薬検査の有無などを確認し、信頼できるメーカーや販売者から購入しましょう。
- 原料を確認する: 特に海外製品の場合、ツヨン含有量の多い可能性のあるヨモギ属植物が使用されていないか注意が必要です。
- 持病のある方・妊娠中・授乳中の方: 肝機能障害などの持病がある方、妊娠中・授乳中の方は、飲用前に必ず医師や専門家に相談してください。よもぎには子宮収縮作用があるとも言われるため、特に妊娠初期は注意が必要です。
- アレルギー体質の方: キク科アレルギーのある方は飲用を避けましょう。初めて飲む場合は少量から試してください。
- 体調不良時は控える: 体調が優れない時や、肝臓の調子が悪いと感じる時は、飲用を控えるのが賢明です。
- 長期間の連続飲用: 毎日欠かさず長期間飲み続ける場合は、時々休止期間を設けるなど、飲み過ぎに注意しましょう。
よもぎ茶の適切な選び方と飲み方
- 選び方:
- 国産原料: 日本で一般的に「よもぎ」として利用される種類(カズザキヨモギ、オオヨモギなど)はツヨン含有量が少ない傾向にあります。
- 無農薬・有機栽培: 残留農薬のリスクを避けるため、可能な限り無農薬や有機JAS認定などの製品を選びましょう。
- 無添加: 香料や保存料などが添加されていない、よもぎ100%のものが望ましいです。
- 茶葉の状態: 乾燥がしっかりしていて、色が鮮やかな緑色(焙煎タイプは茶褐色)で、よもぎの良い香りがするものを選びましょう。
- 飲み方:
- 製品に記載されている淹れ方を参考に、適切な温度と抽出時間で淹れましょう。
- ホットでもアイスでも美味しくいただけます。
- ハチミツや生姜を加えて風味を変えるのも良いでしょう。
まとめ:「よもぎ茶肝臓に悪いなぜ」の疑問を解消して賢く楽しもう
「よもぎ茶肝臓に悪いなぜ」という疑問について解説してきました。主な懸念点としては、一部のヨモギ属に含まれる「ツヨン」の存在、ピロリジジンアルカロイドの混入リスク、過剰摂取、農薬残留、アレルギーなどが挙げられます。
しかし、日本で一般的に流通している国産のよもぎ(Artemisia princeps など)を原料としたよもぎ茶であれば、ツヨンの含有量はごく微量かほぼ含まれず、品質管理された製品であればPAs混入のリスクも低いです。したがって、健康な方が適量を守り、信頼できる品質のよもぎ茶を選んで飲用する限りにおいては、肝臓に悪影響を及ぼす可能性は低いと言えるでしょう。
むしろ、よもぎ茶には多くの有益な成分が含まれており、古くから健康維持に役立てられてきました。大切なのは、リスクとなり得る要因を正しく理解し、過剰摂取を避け、品質の良いものを選び、自分の体調と相談しながら楽しむことです。この記事が、よもぎ茶との上手な付き合い方を見つけるための一助となれば幸いです。
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